ブログでも免許更新したら、「トラックが運転できるようになった」とか書いている人がけっこうおります。
“できるようになった” のではなく、元々できたわけですが・・
今まで普通免許で4tトラックが運転できたことを知らない人も多いわけで、それがいきなり中型に変わって、しかも8tとか表記されるとビックリして「得した」とか「グレードアップした」などと勘違いするのも無理の無いことだと思います。大型トラックが10t車と呼ばれていることを何となく知っている人が8tとか聞くと、10tトラックに近い大きさではないかと想像してしまうのでしょう。
4tトラックが運転できることを知っていた人でも、総重量と積載量の区別ができる人は少ないと思われ、「今まで4tだったのが8tまで可能になった・・」とこれまた勘違いしてしまうわけです。(8トン積車だと総重量が11tを超えますので、新制度でも大型免許が必要です)
さらに、「マイクロバスが運転できるようになった」・・などと言うのは勘違いの極地です。
免許証の条件欄に「8t」という数値しか記載されていないのが元凶だと思います。誤解を生じない表記に改めるべきだと思います。そして、免許更新時の講習で十分に説明すべきだと思います。
ということで、8t限定中型で運転できる車を具体的に紹介します。
■4t トラック
ISUZU FORWARD Fカーゴ ウィング
全長:8615mm、全幅:2320mm、高:3545mm
乗車定員:2人、最大積載量:3100kg
車両重量:4785kg、車両総重量:7995kg一般的な4tトラックの大きさは 幅2.3m、全長8m前後 です。
ワイドロングというタイプですと、幅2.5mで全長は9m近くになります。これは大型路線バスのショートタイプとほぼ同じ大きさです。一般人から見れば大型車両だと思いますが、トラックとしては中型なのです。
業界では免許区分の総重量8t未満の目一杯のトラックを慣習的に(積載量が4t前後なので)4トン車と呼んでいます(積載量の免許区分は5tですが 5t車とは呼びません)。 4t車とは言っても実際には車種によって最大積載量は様々です。総重量8tから車両重量と乗車定員重量を引いた値を最大積載量に設定するわけです。よって最大積載量は平ボディで4.5トン前後、ドライバンで3.5t前後、ウィングバンで3t前後、冷凍車でパワーゲート付きだと2.5t前後になります。
このような中型トラックは現在の運送・物流業界では主力の車種です。これが(新)普通免許では運転できなくなりますので、業界にとっては今後の運転手確保が大きな課題となります。
■4t 超ロング (通称 オバケ)
HINO RANGER ワイドキャブ超ロング
全長:11990mm、全幅:2460mm、高:2450mm
乗車定員:3人、最大積載量:3700kg
車両重量:4070kg、車両総重量:7935kg
道路交通法で規定されている最大サイズ(全長12m、全幅2.5m、全高3.8m)の上限一杯で大型トラックと同じ大きさです。軽量化の為に後輪が一軸で、リアオーバーハングが異常に長いのが特徴です。4t車の荷台に無理やり10t車の箱を載せたような感じで、業界では “オバケ4トン” と呼ばれています。
平ボディでは塩ビパイプなどの軽量な長尺物、箱車では家具やウレタンマットなど軽くて かさ張る物を運ぶのが目的です。箱車の場合の最大積載量は2t程度です。
運転はホイールベースとリアオーバーハングの長さから大型トラックより難しいと言われています。
10tトラックは従来「特定大型」として大型免許に加えて年齢21歳以上で普通又は大特で3年以上の免許期間がなければ運転できませんでした。しかし、お化け4トンは10トン車と全く同じ大きさなのに旧普通免許(現・8t限定中型)で初心者でも運転できるのです。
どう考えても危険なことだと思いますが、日本の免許制度には車両の大きさによる区分が無いから、このような最大サイズの車両でも最大積載量の数値を小さくすることで大型免許不要なケースがあるのです。
■2t車ベースの各種業務用特殊車両
CANTER 塵芥車
全長:5230mm、全幅:1860mm、高:2235mm
乗車定員:3人、最大積載量:2000kg
車両重量:3970kg、車両総重量:6135kg
CANTER タンクローリ
全長:4860mm、全幅:1890mm、高:2190mm
乗車定員:3人、最大積載量:2790kg
車両重量:3410kg、車両総重量:6365kg
CANTER 車両運搬車
全長:7590mm、全幅:2190mm、高:2235mm
乗車定員:3人、最大積載量:2000kg
車両重量:4150kg、車両総重量:6315kg
DUTRO ミキサ
全長:5250mm、全幅:1880mm、高:2270mm
乗車定員:3人、最大積載量:3000kg
車両重量:3160kg、車両総重量:6325kgこのような2tトラックをベースにした各種業務用車両は小型でも車体が重いので車両総重量が5トンを超えるものがほとんどです。従来は普通免許でOKでしたが、現在は「8t限定中型免許」以上が必要です。これらの車両を使用する各業界も今後は運転手の確保が課題となります。
■小型消防車
消防団では この写真のようなダブルキャブの2tトラックをベースにした小型消防車が多いと思います。消防車はポンプなどの装備で車両重量が重くなります。2tトラックがベースでも車両総重量は7t前後になります。
従来は普通免許でOKでしたが、これからは「8t限定中型免許」以上が必要です。今後は「中型免許」を持った団員の確保が課題となるでしょう。
■8t トラックはNG (要 大型免)
HINO RANGER 8トン積
全長:8465mm、全幅:2330mm、高:2620mm
乗車定員:2人、最大積載量:8700kg車両重量:4620kg、車両総重量:13430kg大きさは一般的な4tトラックとほぼ同じで、積載量を大型カテゴリにして重量物を運ぶ為のトラックです。昔は鉄道貨物コンテナを運ぶのによく使用されていましたが、最近は需要がありません。
車両総重量が「8t限定中型免許」の8t未満、「中型免許」の11t未満の制限を超えているので、新区分でも大型免許が必要です。
8t という数値から、今回の区分改正で最も勘違いされやすいトラックです。
免許の条件欄に記載されている 8t は車両総重量のことで・・・
世間一般や運送業界でいう「・・トン車」というのは最大積載量のことです。
「今まで4tだったのが8tになった・・」などというのは積載量と総重量の混同からくる誤解です。
運送業界でも免許区分から中型トラックのことを(総重量で)8トン車と呼ぶ場合もあるので非常に紛らわしくなっています。
■マイクロバスもNG (要 中型限定解除)
Mitsubishi FUSO ROSA
全長:6990mm、全幅:2060mm、高:2645mm乗車定員:29人(座席28+立席0+乗員1)
車両重量:3870kg、車両総重量:5465kg「マイクロバスが運転できるようになった」というのは思い込みによるデマです。
以前は定員11人以上の車は大型免許が必要でしたが、新設された中型免許では定員29人以下の車を運転できるようになりました。しかし、「8t限定中型免許」は旧普通免許と全く同じで、定員は10人以下の車でないと運転できません。定員11人以上(29人以下)の車を運転するには中型の限定解除が必要になります。
この誤解も免許証の条件欄に『8t に限る』としか書いてないことが原因でしょう。新規の中型免許は定員29人まで可能・・・マイクロバスは重量8t未満だろうから、8t限定中型で運転可能・・と思い込んでしまうのだと思います。
ちなみに、さらに大きなバスでも 定員10人以下で総重量8t未満のキャンピングカーなどに改造すれば、8t限定中型免許で運転可能になります。
今回の免許区分の改正目的は(事故が多いから)普通免許で中型トラックを運転させないことです。
旧普通免許を温存(既得権保護)したことは業界の混乱を考慮して仕方ない措置かもしれません。でも旧普通免許で中型トラックが運転できることを知らなかった人も多いわけで、そんな人たちにまで「運転できますよ!」と知らせているようなもので・・・しかも大型トラックまで運転できると錯覚しそうな表記はいかがなものでしょうか。
とにかく誤解の元凶である 『中型車は中型車(8t)に限る』 という奇妙な表記は早急に改めるべきだと思います。
次回は中型を限定解除した場合に運転できる車を紹介します。
★にほんブログ村 人気ランキング
←よろしければ クリックをお願いします